読書は続く

 通勤電車読書が続いている。ほとんどが高校生の車内で読書なんかしている者はほぼ皆無、皆スマホとにらめっこだ。毎日同じ時間の同じ車両で顔を合わせるメンバーはほぼ固定している。座る位置も固定している。私はボックス席ではない長い席に座る。その向かい側には「ずん」の飯尾似のおっさんが座っている。必ずキャップを被っているが特筆すべきは4種類ほどあるキャップを日替わりで取り換えることだ。しかもTシャツやポロシャツをキャップに合わせて変える点だ。アルファベットの「A」に似たロゴの帽子の時は、同じロゴが胸についたポロを着ているのだ。下半身はいつもジーンズに運動靴というスタイルだ。いったいどんな仕事をしている人物なのか不明だ。アニメ、ゲーム、アウトドアが好きなんだろうな。
 もう一人は津幡駅から乗ってくる青年だ。この人物は長椅子席の端に座る、キャップおじさんに最も遠い席だ。すなわち、私のとい面席の両端に二人が鎮座する。青年の印象は「俺はくたびれている」だ。あと3年で毛髪減少が進行すると思える髪の毛。夏なのにいつもチェックの長袖シャツ、くたびれて裾を折っている綿パンと先が剥げた安全靴。青年は口を半開きにしていつも寝る。辛く面白くもない仕事に向かうんだろな。青年にはキャップおじさんのようなファッションへのこだわりは皆無だ。ただチェックのシャツが大好きなんだろうなあ。
 そして私だ。太った爺さんが大きなリュックを持ち、電車に乗り込むや否やすぐ読書。どんな本かというと「重耳(下)」、20年以上も前のベストセラーってか。こんな本を読むような爺さんとは関わりたくありませんてなもんだ。
 しかし、中国春秋時代の晋の文公(重耳)を描いたこの本は結構面白い。荘子の「美女と鳥や獣の話」に登場する美女の代名詞「驪姫」が登場するし、何といっても一番かっこいいのは遊牧民白狄出身の「狐突」だ。春秋の五覇といっても文公について世界史で習うことは皆無。小説として楽しんで古代に思いをはせるのもよきかなですね。